認知症の嚥下障害


食事を食べてくれない

 

このようなピンチになった事は ありませんか?

 認知症の摂食嚥下障害は大きく三つに分かれます。

  1. 口に入れるまでの食行動異常 
  2. 口に入れてからの送り込み障害 
  3. いわゆる嚥下障害 

食事が取れないことは脱水につながります。脱水は高齢の認知症の方には命の危険につながります。

 

勿論生活の中で個々の嚥下障害に対応しなければなりませんが、ここでは特殊な器具が必要なわけではなく食べ物の味と形態・環境を整える事によってご家庭・施設でも出来るいくつかの具体例と対処法をご紹介します。

確認すること

 

☑全身状態を把握する

全身状態低下(疾患、便秘、せん妄、脱水等)は食欲低下、嚥下困難感が出現します。

 

☑認知症状の問題はないか

食行動異常がある

 

☑口腔内に痛みはないか

粘膜に傷を作ります。

☆入れ歯が合わない

☆歯が折れて舌が傷つく 

☆口内炎

の場合も食べられない事があります。 

こんな時どうしますか?

【むせる】

むせるとは刺激物(物や気体)が気道に入った時に起こる防御機能です。誤嚥は誤嚥性肺炎の原因です。しかし誤嚥に引き続き肺炎になるかは侵襲と抵抗のバランスです。侵襲とは刺激物の量と性質です。抵抗とは呼吸・喀出機能と免疫力です。

 

誤嚥≒誤嚥性肺炎

 

改善の即効性ある方法は食形態と姿勢調整です。

長期的には呼吸理学療法です。

 

食形態は食べ物を刻みあんかけ風にするかトロミ剤の使用。

 姿勢調整はかなり難しく身体状況に左右されます。

 うがいや服薬もトロミ水が必要なケースがあります。

 

【食べない】

次のようなものであれば、食べられる可能性があります。

1.甘いもの

  • 卵豆腐よりプリン
  • 米粥よりパン粥
    (バター、砂糖を加える)

前頭葉症状が出ると甘い物好きに変化します。カロリーアップしやすく最も有効です。

2.甘辛いもの

  • ウナギ
  • 焼き鳥
  • 親子丼

3.味の濃いもの

  • ふりかけ
  • ウナギのたれなどをご飯・お粥にかける
  • 梅干し・沢庵を混ぜる

 


【止まってしまう】

 ■記憶の回復(スイッチを入れる)

食事を前に止まってしまうケースがあります。

食事を始める事の声かけがもっとも有効です。

また情報量を少なくする事が基本です。

器の色、器の数、トレー、エプロンの柄などです。

白い器に粥を黒い器に変えるだけで改善するケースもあります。

 

手で持つ、フォークに指して渡す、箸・茶碗を持たせる、湯飲みでお茶を一口すする

など些細な事で食べ始める事があります。

アルツハイマー型認知症の後期ではよくあります。

 

■食感を変える

  • ごはんにあられを混ぜる。
  • 炭酸(炭酸、コーラ、ノンアル)
  • ゼリー(送り込みを誘発する事)

 

      

【出してしまう】

飲み込めない物は出してしまいます。

食事形態があっていないので調整します。

  

■菜っ葉

・よく茹でる

・繊維質を切る

 例えばアスパラの穂先、ブロッコリーの小房を柔らかく茹でる

  

■薄切り肉

つくね・ハンバーグに代える

  

■油分の少ない魚

缶詰を利用

  

■刺身

白身でもたたきに 

  

■お豆の皮など繊維質

 野菜ジュースで対応

 


【詰め込む・窒息のリスク】

 

食行動異常で詰め込みやかきこみなどする方がいます。

 

一口量の調整ですがかきこめない工夫が必要です。

 

小分けにして提供する

松花堂弁当のように持てない重さ大きさにする。

 

 

特殊な器具がいるわけでなく、食品の味と形態・環境設定だけです。

 

慎重にすれば(経口摂取してない人をいきなり食べさせる。意識低下、寝ている人に食べ物を突っ込む等は厳禁)ご家庭で出来ます。